SHINOBAZUコラム65
2003.5.6

 ゴールデンウィークに、美術館めぐりをされた方も多い事と思います。お気に入りの美術館は、ありましたか?
 3月28日から合計7回にわたって、当画廊ともお付き合いの深い小銀さんによる「展覧会探訪記」をご紹介しています。大川美術館を舞台に繰り広げられる小銀さんと美術館にかかわる「人」と「作品」との素敵な出会いも第5回目となりました。どうぞお楽しみください。

小銀さんの展覧会探訪記 (5)

大川美術館  5    夢みる夢子さん

 
 翌日、用事が済んだ後、再度美術館に直行です。私の入館と同時に、芸術家タイプの二人の男性が入ってきました。時々館内でいっしょになります。聞いてるつもりはないんですが、ビデオの順番をどうするとか、なにやら勉強会の話が耳に入ってきます。思い切って聞いてみました。今晩、閉館後に、友の会で芸大の教授を講師に、明治時代の油絵の勉強会をやるとのことでした。参加するように、誘われました。友の会の会員でもないし、初対面なのに誘ってくれました。
 誰かが、あらあら、自分が今日の設営当番だから、誘ってるわ。いつも、集まらなくてたいへんなのよね。と笑ってました。おもしろそうなので、参加することになりました。始まるまで時間がたっぷりあります。
 ミュージアムショップを見ていたら、年配の、真っ赤なスーツを着た婦人が、この時計この洋服に合うかしら、と話しかけてきました。品定めのお手伝いをしているうちに、自然に館内巡りが始まりました。館内は、照明を落とし非常灯だけです。人も殆どいません。美術館の美術品独り占めです。初体験の夜の美術館のムードもなかなか良いもので、感動しました。二人でソファーに座り、おしゃべりが始まりました。私は、みんなに夢見る夢子さんと呼ばれてるのよ、と言ってました。友の会の会員で今日の勉強会に参加するそうです。そのうちに、夢子さんが、本領を発揮し出しました。「もうすぐこのバレリーナやあそこにいる人達が集まり出して、おしゃべりが始まるのよ。バレリーナは踊り出すわよ。何の話をするのでしょうねえ。」と言い出しました。知らないうちに私たちは、舟越保武、木内克、北村西望、イサム・ノグチ 、ムーアなどの彫刻の展示室の真ん中に座っていたのでした。いくら、非日常の世界とはいえ、夜の美術館には、そんなムードがあります。そんなことないよー、と思っていたら、また夢子さんが、「画家達も、みんな集まってきて、芸術論を戦わせるのよ。」と言い出しました。350人の収蔵作家のうち9割が物故作家です。私は、急にあらぬことを想像し出しました。思いつくままに、著名作家の死因が頭の中を駆けめぐり出しました。夢子さん変なこと言わないでよ。一人で勝手に白昼夢でも見てちょうだい。もうだめです。夢子さんの手を引いて、急いでみんなのいる明るい場所に緊急避難しました。自分のコレクションの物故作家なら愛着があるし、人数が少ないけどここでは、300人以上の物故作家を相手にしなければならない。もう無理だよー。ここには住めないよー。夢子さん、あんたはいったい誰なのよー。
 かくして、私の大川美術館転居計画の夢は、1年後に夢みる夢子さんのために破れ去りました。


(次回へ続く)


前回コラム 小銀さんの展覧会探訪記(1) (2) (3) (4) (6) (7)

大川美術館

群馬県桐生市小曾根町3-69
Tel 0277-46-3300 Fax 0277-46-3350
http://www.kiryu.co.jp/ohkawamuseum/


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