SHINOBAZUコラム87
2004.10.2

<ここ数ヶ月、コラム掲載が滞っていました。お待たせしました。>


「菅井汲コレクション」の居場所をめぐって

荒井一章




菅井汲「Portrait F」
1976、リトグラフ、ed.150(画廊蔵)


 静岡県在住の若いコレクターN君から9月25日(土)の静岡新聞夕刊の切抜きが送られてきた。その見出しは「故 菅井汲氏(1919-96)の作品224点が広島県に流出」、静岡の「美術ファン残念」という記事である。菅井汲は晩年、熱海にアトリエを設けていた。夫人も2003年に死去。夫人は生前、静岡県に寄贈を申し入れたが展示スペースなどの問題で条件が合わずにいた。その間に夫人の出身地である広島県に移ってしまったというのが事の経緯である。N君のような大の現代美術ファンにとっては、世界的な有名アーチストのコレクションが他県に流出するとは痛切のきわみ、何ともやりきれない思い。
 添えたメッセージにはこうあった。「2002年には、熱海市で死んだ池田満寿夫の作品も同様な問題で横浜市に移ってしまった― そのことと合わせ、静岡県は、またやられてしまいました」と。
 菅井汲といい、池田満寿夫といい、20世紀の日本を代表するアーチストでしかも静岡ゆかりの人である。N君の嘆きはもっともだ。いい作品はどこであれ、ふさわしいところを得れば良しというべきだと私は思うのだが、静岡県人のN君の心情もよくわかる。静岡県立美術館に収まればきっと目玉になったはず― お金の問題がいちばんだが、立派な花博を開く大静岡県としては、逃がした魚は大きい。

(あらいかずあき/画廊主)

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