SHINOBAZUコラム83
2004.3.12

私と池田満寿夫(2)

荒井一章

池田満寿夫の墓前にて

熱海の海を見下ろせる池田満寿夫の墓(撮影・筆者)


3月8日は池田満寿夫の命日だ。毎年この日、熱海のMOA美術館に近い山の中腹にある墓地にお参りに行くことにしている。

今年も行ってきた。新幹線熱海駅に降りてタクシーを拾う。「熱海中学前の墓地へ」と告げる。つづら折りの山道を10分も行くと墓地に着く。山の斜面の墓地で、眼下に光る海が見下ろせる。

池田満寿夫の墓は自分の作品でウサギのような形をした金属のオブジェだ。石のお墓が並んでいる中で、ひときわ光り輝いていてすぐわかる。
この日は春の陽光と晴天の青空とあって、まぶしいほど光って見えた。彼は好きな海を眺める場所に永遠に眠っているのだ。もう没7年、早いものだ。

昨年の同じ日は高校同級生のS君と連れ立って出かけてきた。S君によれば1976年当時、池田は「ミルク色のオレンジ」という小説を発表したが、問題にされずとても落ち込んでいて、文学青年のS君にアドバイスを求めてきたという。道々そんな思い出話をしたものである。それから1年が経ってしまった。ごみ一つない墓の回り、そして真紅のバラが左右の花立てに10本くらいずつ挿してあり、黄金色に輝く墓碑に映えていた。春の陽光のまぶしい墓前に立ち手を合わせた。

翌日の午後、佐藤陽子さんより電話がかかってきた。「満寿夫のお墓参りいつもありがとう。不忍画廊の展覧会、17日に見に行きます」との明るい声であった。地元新聞によれば、市に寄贈した熱海旧邸も修復費6000万円の予算がつき、記念館になるようだ。また陽子さんによれば、伊豆多賀のアトリエ「満陽工房」もミュージアムに変身しつつあるとのことだ。

多くの池田満寿夫ファンにとって、輝いて走り抜けた天才画家・池田満寿夫の美の殿堂が各地に誕生することは、私にとっても嬉しいことだ。

<あらいかずあき/画廊主>

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