SHINOBAZUコラム85
2004.4.24

「浜口陽三・池田満寿夫」展のこと

荒井一章




池田満寿夫と浜口陽三展が、東京・日本橋蛎殻町のヤマサの経営するミュゼ浜口陽三で開催中である。(8月8日まで)明治42年(1909年)生まれの浜口陽三と、昭和9年(1934年)生まれの池田満寿夫、ともに日本を代表する版画家である。そして二人とも世界最大の版画ビエンナーレで大賞を受賞するという輝かしい足跡を残した点で共通している。こんなビッグ・アーチストのいわば二人展を企画したミュゼ浜口の学芸員に私は大いに敬意を払うものである。これはなかなか考えつかない展覧会だと思う。一般の公共の美術館ではとてもやれないし、考えつかない企画なのだ。いうなれば意表をついた、とでもいうような企画展である。版画のせかいにくわしい人ならば、エッと思うような取り合わせなのだ。浜口と池田、なぜどこに接点があるのかい?といわれるような、不思議な組み合わせと感じられるからだ。いずれにしても好企画のすばらしい展覧会だ。

版画ファンにしてみれば、浜口陽三といえば頭の中に赤いサクランボ、テントウ虫というように精緻をきわめた宝石のような小版画を想像するし、一方の池田満寿夫は切れ味のいい明快な、青天下のエロスをイメージするアーチストだ。近代日本銅版画の巨匠が二人合わさって奏でる音はどんなものか − 興味しんしんだろうと思う。

私は初日早くにミュゼ浜口に出かけた。それぞれにきちんとおさまり返ってみじんの雑音もないのだ。さすがともに後世に残る芸術家なのだ。もうひとつ、すばらしいものがあった。200円で販売されている展覧会カタログである。タテ×ヨコ数センチのモノクロームの浜口と池田のパリのカフェでのツーショットである。浜口家の親族の方が陽三先生を訪ねた折、池田夫妻と同席の場面を撮ったものである。この小さな写真がこの展覧会のすべてを物語っている、と私は思ったのである。

(あらいかずあき)

◆会場・問合せ先 :ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
(地下鉄半蔵門線・水天宮前より徒歩3分)
◆入場料 :大人600円、大学・高校生400円
◆月曜休館

東京都中央区日本橋蛎殻町1-35-7
tel.03-3665-0251
URL http://www.yamasa.com/musee

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