ビュランに捧ぐ・・・ 渡辺千尋と門坂流

[ 2015年12月22日 ]

渡辺千尋 「空の森」原版 1987年 ビュラン 240×364mm

会期:1/12(火)~2/13(土) 日祝休 11:00~18:30
◇2/13(土) 13:00頃~ クロージングイベント
・・・2作家共通の知人であり、今企画の小冊子にもご寄稿頂いた、泉鏡花賞受賞作家・寮美千子(りょうみちこ/)によるパフォーマンス

◆小作品集刊行 『ビュランに捧ぐ… 渡辺千尋と門坂流』 B5版カラー ¥540
・・・その他、会期中は2作家の関連作品集を数種販売致します。

世界最古の銅版画技法・エングレービングはその道具の名をとりビュラン彫りとも言われ、一般的には紙幣の印刷方法として知られています。ツルツルの銅板上を自在に彫刻出来る繊細な技術・集中力はもちろんの事、まず切先を極く鋭利に砥がなければならない(渡辺氏曰く「地獄の…」)修行のような作業があり、この鉄の刃を砥げる者だけがビュラン作家になれると言えます。〈作家が選ぶのではなく、ビュランが作家を選ぶ〉と言われる理由の一つです。渡辺千尋と門坂流はまさに〈ビュランに選ばれた〉稀有なアーティスト。共に正規の銅版画教育は受けず緻密なペン画や油彩画を描きながら、導かれるようにビュランに出会い独学でマスター。稀有な才能を持つ者同士、同じ手法ながら作家としては資質が異なり、対立しながらも2人展開催や公開対談など交流を深めました。渡辺は2009年、門坂は2014年、ともに60代半ばで、多くの友人・美術ファン・若い作家達に清冽な作品と作家自身の強烈な記憶を残し、永眠されました。今展では20点程の作品とその全原版を展示、ビュランに選ばれた2人のアーティスト、その神髄に一人でも多くの方が触れられる企画になることを願っています。

「銅板が豆腐みたいになる、(渡辺)」     「手の中で金属が柔らかくなっていく感じ(門坂)」
「やってみたものにしかわからない快感はエロチックでさえあるが、ビュランが砥げない者には地獄でもある…。」(二人の対談より)

 

   
笑う男 懺悔の夢景 象の風景-N村地区 空の森 三日月のマリア
渡辺千尋 渡辺千尋 渡辺千尋 渡辺千尋 渡辺千尋
ほおずき 無辺 曼珠沙華 深夜の肖像 地霊
渡辺千尋 渡辺千尋 渡辺千尋 渡辺千尋 渡辺千尋

 

 

   
石畳の坂道 露草と蝶 扇の滝 荒波 秋桜
門坂流 門坂流 門坂流 門坂流 門坂流
大滝(モノクロ) 枯れたホオズキの実 白馬・八方池 一角獣
門坂流 門坂流 門坂流 門坂流 門坂流

 

[ ブログ ][ 門坂 流・渡辺千尋 ] ビュランに捧ぐ・・・ 渡辺千尋と門坂流:会場風景

[ 2016年11月17日 ]


↑ 本展では展示作品の原版も展示。
そのうち何点かは数十年の月日の中で銅版が腐食され、緑青に覆われていました。
銅版画の作家さんにも手伝って頂き、酢と塩で幾度も幾度も洗って、ようやくイメージが確認できたものもありました。
版を見ることで、両氏の微妙な線の違いや、刷った作品ではなかなか分からない彫りの強弱を感じられます。


↑ 手前の原版は渡辺氏のボッティチェリの春の摸刻。
写真ではわかりづらいのですが、手のひら程の版に引かれた圧倒的な線はスケール感を揺らがせる。




↑ 渡辺千尋「大地の祈り」
こちらは二版多色刷り。この版は最も腐食が進んでおり、版の洗浄に苦労しました。。




↑ 左:渡辺氏のビュラン 右:門坂氏のビュラン
作家によって道具の形状が違う。
奥にあるのがクッサンと呼ばれる、版の下に置き、回転させながら彫り進めていくための道具。





↑ 門坂流:左「深淵」1988 エングレービング 右「一角獣」2003 ドライポイント



↑ 渡辺千尋「懺悔の夢景」1978 エングレービング


↑ 渡辺千尋「地霊」2004 メゾチント


↑ 左: 渡辺千尋「曼珠沙華」2009 エングレービング
 右: 渡辺千尋「無辺」2007 エングレービング


↑ 門坂流:左「大滝(モノクロ)」1988 中央「扇の滝(モノクロ)」1992 右「深淵」1988 全てエングレービング


↑ 門坂流:左「オンディーヌ」1978頃 右「炎」1986 いずれもドローイング

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